TOP INTERVIEW 2020

『釣具新聞2020新年号』より ※記事のご提供:名光通信社様


おかげさまで、昨年タカミヤは創業70周年を迎えることができました。これもひとえに皆様の御支援、御愛顧の賜物と深く感謝申し上げます。これを機に、社員一同、今一度創業の精神に立ちかえり、これまで積み重ねてきた歴史と同様に一層の努力を重ね、皆様のご期待にお応えしていく所存でございます。

ー2019年について

 2019年は様々なことがありましたが、おかげさまで前年を上回る成長が出来ました。一年を振り返ってみると、年が明けてしばらくは、一昨年と比べて売上も二桁が続き、非常に良いスタートが切れました。しかし、7月以降は南九州、北部九州と二つの豪雨が九州に襲来しました。さらに、その後は台風が頻発し、特に、台風15号や16号では、中部地方、関東地方など東日本に甚大な被害をもたらしました。

 弊社は以前より「災害に強い会社」を目指し、店舗の災害対策や災害時でも迅速で適切な対応が出来る体制作りなど、備えの徹底を行ってきました。その成果もあり、大きな被害は出ませんでしたが、この期間の売り上げは厳しい状況となり、気象の極端化、それによる災害の増加を改めて感じた一年でした。
 また、消費者の行動も変化しており、生活スタイルの大きな変動を感じます。特に、地方都市において夜間の人の動きが年々減少しているように思います。今はSNSが盛んで、リアルに友達と会わなくても、家にいながら繋がっていられる、買い物もネットで出来る時代です。こういった背景から、わざわざ深夜に出歩く必要性が薄まってきたのだと推測されます。消費についても、モノからコト消費へのシフトが続いています。中でも、若い方ほどものを所有するのではなく、食事や旅行などSNSでアピールできるようなコト消費が増えているように感じます。
 一般的に釣具が売れない理由は色々あると思います。例えば、売れ筋商品の供給過多や地方都市の経済環境なども影響するのでしょうが、やはり釣具の場合は天候に売り上げが大きく左右されます。台風や大雨で売り上げが低迷すると、その後は様々な店舗でセールが行われます。予測に反して商品が販売できなかったため在庫が過多となり、小売店は価格を下げて在庫を減らそうとします。そのため、天候不順が続くと、各地で価格競争が激しくなる傾向にあります。さらに、お客様のイベント疲れもあると思います。近年は、EC、リアル店舗を問わず年中セールが行われています。特に、昨年はキャッシュレスを普及させるため、国によるキャッシュレスのポイント還元や決済事業者による大規模キャンペーンが行われました。あらゆる場面で販促活動が実施され、お客様にとってセールが当たり前の状況になっております。
 自然災害の頻発化、消費者行動の変化、増え続ける在庫の問題、この状況を踏まえても、昨年は、これから進むべき道や取り組むべき課題がより明確になった一年でした。

ー釣り人を増やす取り組みについて

 私は、釣りをしない人でも入ってみたくなるような「良い釣具店」を作ることが、新規の釣り人を増やすことに繋がると考えています。今、釣りに興味のある方はとても多いです。弊社が新しくオープンした店舗では、初心者の方やテレビ、ネットで釣りの番組を見て興味を持たれた方、ファミリーでご来店される方も多く見受けられます。清潔感のある店内で明るく丁寧な接客を行い、釣り初心者の方にも快適な空間を提供していく。こういったことが釣り人を増やすためには必要不可欠だと考えています。
 このような店づくりを行うことは別の面でもメリットがあります。というのも、弊社は今年も約70名の新入社員を採用する予定です。人材確保が難しいと言われる昨今でもおかげ様で多くの応募がありますが、その大半の方は元々ポイントのファンです。子供の頃からお店をご利用頂き、その印象が良かったため、入社を希望されるのです。つまり、お店のファンを作ることは、働き手、担い手を増やすことにも大きく繋がっています。
また、リアル店舗の価値を追求していくと、オンラインでは伝えることができない、実際に商品を見て触れて、お客様の五感に響く売り場作りが重要です。メーカー様の世界観や商品開発者の思いが伝わる店舗作りを大切にしています。そして、SNSや動画を通じての釣りの普及は大変重要になっています。釣りファンを増やしていくためには、スマホユーザーに釣りの魅力を発信していくことが欠かせません。弊社も釣りを通じて私たちと一緒に楽しんで頂けるような仕組みを構築していく予定です。

ー2020年の課題

今期は大きく5つの課題に取り組んで参ります。

1経営の規模ではなく質へ
2デジタル領域にて確固たる地位を確立
3異常気象、災害級の悪天候が毎年続く中での営業活動の在り方の見直し
4人財育成の強化、生産性と業務効率化の追求
5過剰化傾向の在庫への確実な対応

■2019年に増床した第三物流センター

 今年は弊社にとっても一つの大きなターニングポイントになると考えています。それは、「規模から質」への変化です。規模をいたずらに追いかけるのではなく、あらゆる分野においての質(クオリティ)を追い求めていきます。質を高めることは働き方改革にも繋がりますし、その先に来る本格的な人口減少の時代に対応していくためでもあります。
「アマゾンエフェクト」という言葉の意味をあらゆるところで実感することができますが、私たちは世界的な大手ECとも競合していかなければなりません。そのため、近年は社内の基礎固めを行ってきました。新規のお客様にもご来店頂きやすい店作りを進め、人財育成にも力を入れてきました。そして、第三物流センターも稼働させ、リアル店舗への物流業務やECのお客様へ確実に商品をお届けするためのロジスティクスを整えてきました。
 続いて挙げられるのが、「デジタル領域の強化」です。弊社には70万人の会員様がおられますから、ファンコミュニティをますます活発化させ、お客様とリアル店舗やECを繋ぐ架け橋にしたいと考えています。デジタル領域の強化により、釣りの楽しさや素晴らしさを多くの人に伝え、上手くマッチングしていくことが今年の大きなテーマとなります。

■業界初導入のオートストア

 人については、人時生産性を高めることが必要だと考えます。釣具の小売業で生産性を高めるためには「売れる時に一生懸命販売する」ことに尽きると思います。我々がどれだけ入念に準備をしても、大雨や台風が続けて来れば、お客様は顕著に減少します。これは、釣具の現在の業態では仕方のないことです。ですから、お客様が動く時に欠品による機会ロスや販売ロスが起こらないようにしなければなりません。

ーお客様の心を動かす仕事

最盛期には、接客に加えて、糸巻きや修理の依頼、持ち込まれた魚の撮影など人が必要な業務が増えますが、それが釣具店の付加価値でもあります。いくら営業時間を延ばしても、働き方改革で人の配置を減らせば、お客様の要望にも対応できず、目に見えないロスが多くなります。お客様に喜んで頂き、釣り場へ誘う。そして、お客様を称え、釣りの喜びをシェアし、お客様の気持ちを盛り上げていく。これらはリアル店舗にしかできないことであると考えています。加えて、これまでタカミヤで大切にしてきた、企業風土作りに再度取り組んで参ります。個々の権利が主張されていく時代にあって、自分たちの会社は自分たちで守り未来を切り開いていくという自覚を持つ勤勉勤労の精神こそが労働の質の向上に繋がると考えます。労働も質、店舗も質、在庫も質、仕入も質、人財も質、規模ではなく、あらゆる質を追求していかなければなりません。これが今期の大きなテーマです。


今は、物の手配だけならECで十分に事足りますが、ネットにはないリアル店舗の価値はお客様の心を動かすことです。この使命感を持って、我々は今後も仕事をしていきます。