TOP INTERVIEW 2019

『釣具新聞2019新年号』より
 ※記事のご提供:名光通信社様

1「平成と今年」

 平成の時代は消費者の生活様式も大きく変わりました。平成の初期はアウトドアブームでした。特に私が覚えているのは1992年に公開された「リバー・ランズ・スルー・イット」というフライフィッシングの映画です。クレイグ・シェイファーやブラッド・ピットが出演していたのですが、美しい釣りのシーンが印象的でした。
 こういったアウトドアブームの流れの中で、90年代後半からブラックバスブームが到来しました。平成初期は釣界も非常に活気がありましたが、その後アウトドアブームに陰りが見え始め、パソコンの爆発的な普及も影響し、お客様の嗜好がインドアに変化していったのではないかと思います。

 釣具の流通業としては、平成に入り大手量販店同士の競争が激しくなりました。釣具量販店以外にも、実店舗とEC間の競争が起こりました。さらに2012年以降は外資系の大手ECサイトでも釣具の本格的な取り扱いが始まり、釣界以外の企業も意識せざるを得ないようになりました。こういった複雑化した競争の中で、釣具店の店舗もコモディティ化が進み、一段と価格競争も激しくなり、利益が取りづらい状況に変化していきました。
 特にここ5年程の間に、店舗運営に関わるあらゆるコストが上昇しました。人件費、販促費、建築費、家賃、物流費などの上昇により、高コスト体質化しています。それに加えて、働き方改革や担い手不足、人口減少、天候の変動、極端な自然災害など、新しく意識しなければならない事が次々と現れてきたのが、平成の後期だと思います。

 タカミヤとしては平成の時代に、常に時流を捉え、先見性を磨き、デジタル化の波など未来を予測して投資を行い、戦略的に事業展開を行い、当社の価値を高めて競争力を高めてきました。具体的には、サプライチェーンマネジメント、全店にPOSの導入、チェーンオペレーション、人材育成、ピーズクラブ(ポイント会員)、物流倉庫やシステムの構築と改革など様々な事を行ってきました。当社のECサイトは1999年にスタートしています。楽天も1999年のスタートですから、釣界はもちろん世の中でも先んじたスタートだったと自負しております。先に述べましたが、常に時流を捉えて先見性を磨き、投資を行い、企業価値を高めて競争力を磨いてきた事で、今のタカミヤがありますし、今後もこの考え方は大切にしていきたいと思っています。

 さて、昨年(2018年)は天候と自然災害の影響を非常に強く受けた1年でした。ここまで天災の影響がひどい事は想定外でした。ただ、暗い事ばかりを言っていても何も始まりません。明るい未来を信じて、しっかり足元を固め、新しい事に取り組んだ1年でもありました。

 具体的には、第三物流倉庫建設へ着手した事やホームページの刷新、リアル店舗のバージョンアップ、人事制度を見直し一層働きがいのある会社にする事など、当社の足腰をより強くする事に注力した1年でした。天候や自然災害によってリアル店舗では苦戦した期間もありましたが、卸や海外販売チーム、EC等もよく頑張ってくれました。タカミヤ全体としては昨年を上回る結果が出せた事に対して、改めてスタッフ感謝しています。

 内部の体制を強化し、足りない部分を補い、組織を更に強化できた年でもあり、2020年、そして2030年の飛躍に繋がる年になったと思います。


2「消費増税」

 もちろん増税の前後には一定の駆け込み需要や反動はあると思いますが、今のところ、それほど大きな変化や混乱は起きないと思っています。数年前から釣具の価格も上がっていますし、今回の増税に関しても、突然出た話ではなく延期を繰り返し、以前から決まっていた事です。2%の変化で極端に国民の消費動向が変わるとは思っていません。また、当社もこの消費増税で起こりうる変化を乗り越えるだけの投資を行ってきました。もし、増税の影響が想定以上にマイナスに出たとしても、当社はそれを打ち消すだけの投資を続けてきましたから売上への影響は限定的な物になると考えています。

 消費税に関して1つ気になるのは、価格の表示方法です。私はお客様の利便性を追求すれば、総額表示が良いと思いますし、当店では全て総額表示です。世界でも総額表示が当然ですし、税率が10%になると支払う税金も金額によっては多くなります。本体価格プラス税金ではなく、総額表示がお客様にとっても分かりやすいと思います。


3「2019年の取り組み」

 当社は2020年から飛躍の段階に入りたいと考えており、2019年は昨年に引き続き、足下を固める、守備固めの年にしたいと考えています。2019年の当社のテーマは「デジタル時代に対応した新たな価値を創造し、お客様に提供する」です。デジタル化というとIOTやAIという言葉が出てきますが、言葉だけでなく、具体的にデジタル化を進めて消費者の変化に対応できなくてはなりません。
データがあるだけでなく、AIを使ってそれをどう分析するのか。売れ行き不良商品をどうするのか。そういった所まで踏み込んだデジタル活用を進めていきたいと思います。

 それと同時に、デジタルの力も利用して仕事の合理化、効率化を進め、スタッフの働く環境を更に良くしていきます。
当店は昨年、大晦日を店休日としました。これは平成になって初めての事です。さらに今年1月から3月まで毎週火曜日を全店定休日とします。社員の生活向上のためにも定休日は必要であると思いますし、人口減少で担い手不足が懸念される中、既存の社員にはもちろん、就職希望者から選ばれる会社にならなければ、継続して成長していく事は難しいと思っています。

 足下を固める取り組みとしては、第三物流倉庫の建設やファンコミュニティ、リアル店舗、EC、アプリの提供などを通じて、当社とお客様との関係をより強化し、釣りの楽しさ、喜びをシェアできるコミュニティを作り、釣りそのものを盛り立てていきます。そして、当社独自のロジスティクスで、お客様の手元に商品をスピーディに確実にお届けする仕組みを作ります。

 昨年は特に天災の多い年でしたが、将来を見据えて災害に強い会社を目指します。店舗の災害への対策と備えを見直し、災害時に迅速で適切な行動が出来る体制作りを強化します。更に天候別の仕事の進め方まで踏み込んで改善していきます。また、昨年はポイント出雲店でお取引先メーカー様の「商品開発者の想いが伝わる売場作り」を展開しました。こういった事も含めて、ポイント独自の商品展開や販促イベントを行い、リアル店舗の売り場に更に磨きをかけていきます。
仕入れについても、スムーズな新製品導入のため、滞留商品にしっかり手を入れていきます。そして、仕入れた商品をしっかり販売していく。これをより具体的に進めてまいります。

 最後に、平成の時代はお客様が商品を購入される選択肢が各段に広がった時代です。B to BからB to C、そしてC to Cに時代は変化してきました。

お客様が釣具を欲しいと思われた時に、どのリアル店舗で買われるのか、中古店で買われるのか、ネット販売で買われるのか、ネット販売の中でも、中古販売、オークションやフリーマーケットなど様々なチャネルがあります。そういった販売チャネルが多く存在する時代の中で、当店に来て頂ければ、どのような価値、サービス、メリットがあるのかをお客様にしっかり明示しないといけない時代になったと思います。
そのサービスとは厳選された商品の品揃えなのか、情報提供なのか、親切丁寧な対応なのか、あるいはそれ以外のモノやコトなのか、お客様にとってどのような価値を提供できるのかを明確に語れるお店でなければ、今後お客様から選ばれる店舗になる事は難しいのではないでしょうか。

昔はその場所にその釣具店しかなく、選択肢がないゆえに、お客様はその釣具店に足を運ばれていたケースもあったと思うのですが、今のお客様は既に様々な選択肢をお持ちです。リアル店舗の価値は何なのかを改めて見直す時代になっていると思います。

 

 最後になりましたが、改めてお取引様各位の格別のご支援に心より感謝申し上げます。

昨年は様々な事がございましたが、タカミヤ社員一丸となって前年を上回る成長をすることが出来ました。本年も引き続き、旧に倍しましてのご協力をお願い申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。